あぐりの丘をオリーブの丘に
長崎オリーブ研究会 副会長 鶴田康夫
9月19日、長崎市議会の傍聴に行ってきました。
板坂議員から「あぐりの丘について」、あぐりの丘をオリーブの丘にしたらどうかという提案があり、市としても「今、長崎オリーブ研究会が植えているオリーブの成長を見守り、土地・気候に合うようであれば拡大の方向で前向きに検討したい」という回答があっていました。
我々の夢である「あぐりの丘をオリーブの丘にして、長崎を元気にすうで」が一歩前に進んだ気がします。今のオリーブを大切に育てなければと改めて決意した次第です。今日は、早く大きく育って、実をつけろよと声かけながら、あぐりの丘のオリーブに肥料をやって来ました。
2014.9.22
天草オリーブ園見学記
長崎オリーブ研究会 会長 松尾健蔵
7月21日 (日)天草オリーブ園(天草市五和町御領)を視察してきました。
前日、7月20日にグ ランドオープンしたばかりでしたが、来園者はそれほど多くなく、従業員は親切な応対をしていました。
(感想)
◎ 全体的には九電工色(企業色)が出ていて、お金がかかっているという印象。
◎ 植え方は小豆島方式の指導か、樹木間が短い。(イタリア指導の半分程度)
◎ まだ、天草では実が少なく、売店の製品は全て輸入(イタリア、スペイン、
トルコ・・)売店はオリーブオイルの販売が主。
来園者はほとんどが購入していた。
◎ 特筆すべきはオリーブオイルの瓶替わりに、高浜焼き(上田家)が使用されて
いて、地元とのコラボを図っていたことはすばらしいことでした。
● 一見する価値があるので、まず勉強しにいきましょう!!(夏過ぎてか
ら・・・)
2014.8.23
オリーブがきた道
長崎オリーブ研究会 副会長 井上幸雄
長崎市の立山地区は約400年前、山のサンタマリア教会と墓地がありました。そこからスペイン製のオリーブオイル壺が出土しています。
たぶん大航海時代、イエズス会やフランシスコ会等のスペイン人やポルトガル人宣教師がもたらしたものでしょう。ただし食用ではなく、洗礼や埋葬の際に顔にぬるなど“祈り”の対象だったと思われています。
また江戸時代は、出島を通じて伝えられた西洋医学で“薬”として一部使用されていたようです。その意味ではお茶(中国→日本)とよく似ています。
オリーブの苗木が初めて“移植”されたのは文久2年(1862)に幕府派遣の留学生がフランスから持ち帰り、横須賀で植樹されました。おそらく現地で味わったオリーブオイルに感激して「日本でも」と思ったのでしょう。これは失敗だったようですが、明治12年には神戸で栽培が試みられ、同15年に初めて“結実”しました。
そして明治41年、今度は農商務省がアメリカ産の苗木を、三重県と香川県と鹿児島県で試験栽培し、結局は香川県の小豆島のオリーブだけが生き残り、周知のように現在に至っています。
オリーブといっても、オリーブオイルとテ-ブルオリーブ(食用加工)に大別されます。いずれもスペインが世界一(約40%)の生産高を誇っています。この地位は帝政ローマ時代から、変わっていないそうです。
オリーブオイルの場合、これも大別して2種類です。「バージンオイル」と「精製オイル(ピュアオイル)」です。バージンオイルとは、果実をつぶして搾ったり、遠心機にかけて濾過したりして、熱を加えず、全く化学処理をしないで生成されたオイルです。これにはご承知のようにエキストラバージンオイルと“普通”のバージンオイルがあります。それ以外、バージンオイルの“搾りかす”を化学処理されたモノなどはすべて精製オイルです。これを日本ではピュア(pure=混ざりものがない)オイルと称していました。したがって日本の消費者は迷うわけです。ダマサレてきた、ともいえるでしょう。
なぜそうなったのか。オリーブオイルは、食品の中で唯一「官能試験」を受けなければなりません。テイスティングです。この結果しだいで等級が決まります。LやLLといったサイズでもなく、糖度のような基準値もありません。しかも、このテイスティングの担当者を規定する厳密な基準やスタンダードな資格はありません。それを“逆手”というか、抜け道となっているのが“プライベート・ブランド”です。
例えば、オイルの生産工場が指名したソムリエが「これはエキストラ・バージンオイルである」と判断すれば、それは「エキストラ・バージンオイル」と称して販売できることになります。世界一の生産国であるスペイン産のオリーブオイルの4分の3は、この“プライベート・ブランド”だともいわています。
日本だって、驚くほどに悠長です。JAS規格では、オリーブオイルについて「オリーブの果肉から採取した油であって、食用に適するように処理したもの」と定められているだけで、その種類として「オリーブ油(オイル)」と「精製オリーブ油」の2種類しか規定されていません。バージンオイルの“バ”の字もありません。
したがって今、ブームにのって、スーパーなどで堂々と「エキストラバージンオイル」が910g・850円で特売されたり、世界的な食品企業が「オリーブオイル」と称した“100均商品”を販売している現実には、そうした背景があるわけです。
さて、オリーブオイルでも世界一の生産国であるスペインの年間生産高は86万5千トン(2003年)、これに対して、日本のオリーブオイル(不思議ですが、バージンオイルだけの資料)の輸入量は2008年の統計で約2万トンです。この数字、現在ではさらに伸びていると思われます。
これに対して、日本の生産状況ですが、以下は香川県小豆島のオリーブ栽培状況の推移です。小豆島が国内の95%以上を生産しているので、これを日本全体のほぼ現況だと考えてもよいでしょう。
昭和35年には 238トンだった収穫高(オイル、加工食品を含めた数字です)が、平成2年には20トンに激変しました。そして“健康ブーム”に乗り、平成17年には 89トンまで回復しました。現在もほぼこの水準です。これとて、先のオリーブオイルの輸入量と比較しても“国産”は0.05%です。おそらく小豆島に限れば、この数字が限界でしょう。
オリーブはすぐに酸化しやすいため、24時間以内に“処理”しなければならないといわれています。したがって他の果物のような「卸売市場」が存在しません。小豆島では現在、JAのオリーブ班が出荷を担当しています。
その一方で、各農園で独自の“ブランド化(6次産業化)”が進められています。小豆島を抱える香川県では今年度、オリーブ振興のための戦略会議を立ち上げ、品質評価基準に順じた認証制度の創設を考えています。
そうした動きは香川県のみではありません。長崎県では佐世保市や平戸市、南島原市、熊本県の天草市、兵庫県の淡路市など全国に広がりつつあります。
先般、「オリーブオイル・ソムリエ」のことがちょっと話題になりました。
オリーブオイル・ソムリエは、一般社団法人・日本オリーブオイルソムリエ協会(2009~)が認定している“民間資格”です。同協会ではソムリエの育成と同時に、世界中の“作品”を表彰しています。2013年度は112の作品が金賞に選ばれています。その中に天草市で農園を運営している㈱九電工の「AVILO EVOO」も入っています。
ところで、オリーブの効能は、原産地である地中海沿岸や中東アジアで、あえて言えば“太古”から言い伝えられています。いわゆる「健康食品」の優等生です。
エキストラバージンオイルには、筋萎縮症や高血圧症、癌や心臓病に効能があるといわれています。最近では、乳がんの新薬に貢献しているとか、乳がんの成長を遅らせる効果があるとのマウスの実験結果が報告されています。
特にオリーブの葉はむかしから『薬』として信じられてきました。いわゆるOlive-teaです。ポリフェノールの一種であるオレウロペイン(できれば覚えといてください)が唯一含まれている植物です。これは免疫力を高め、コラーゲンの生成にも良いそうです。
私たち、長崎オリーブ研究会では、オリーブの普及をめざして、以下の品種の苗木をイタリヤから取り寄せ、栽培にいそしんでいます。“マイ・ブランド”のオリーブオイルを愉しむために。
・タジャースカ・・・食用・オイル用
・マウリーノ・・・・オイル用
・ベンドリーノ・・・オイル用
・レッチーノ・・・・食用・オイル用
・フラントイオ・・・オイル用
・コラッティーナ・・食用・オイル用
井上幸雄 2014.7.25